2006年07月24日

江畑謙介著「情報と国家」

江畑謙介著「情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴
ITという言葉があります。"I"はInformationのIだと誰もがご存知のことと思います。ではそのInformationって何? 
・データ 細かく分かれた個々の現象や定量的な特性。それだけではまだ何を意味するかわからない種類の「情報」。
・インフォメーション 分析(解析)、評価(判断)を行える、種類ごとの「情報」。
・インテリジェンス インフォメーションを評価、分析したもの。
この違いをわかるだけで、この本は読むのに十分価値があると思います。最初の数十ページだけでも、といったら江畑氏にしかられてしまいますが(笑)。日本語の貧弱性を述べておられますが、結局今まで、日本では「情報」という言葉ですべてが片付いていたということでしょう。だが現代ではそうもいかなくなってきたということですね。だいたい、データという言葉自体、日本語にないですものね。インテリジェンスもしかり。

 湾岸戦争の頃、江畑氏がテレビに出られるようになってから、客観的かつ冷静な語り口に好感を持っていました。著作ははじめて読みましたが、同じ印象をもちました。「はじめに」を読み、目次を読んだら、この本はもう半分以上読んだものと思っていいです。フジマキさんの本もそうでしたが、はっきり言って買わなくても(笑)、立ち読みで目次をしっかり読んでおけば内容は100%理解できると思います。それでもフジマキさんの本といいこの江畑さんの本といい、買って手元に置いておく価値は充分あります。フジマキさんの本は「鮮度」がもっとも重要で、江畑さんの本とはちょっと違いますが。

 国家が情報に左右されることがあると江畑氏はおっしゃっておられます。イラクの問題では、実際に大量破壊兵器や生物・化学兵器がないにも関わらず、「ある」と決めつけて結局フセイン政権を転覆させてしまったこと。攻撃した米英、追随した日本をはじめいくつかの国々。また日本では北朝鮮のミサイルについても、過大評価と過小評価を交互に繰り返している実態。中国の状況を推測する米軍や台湾。過小評価することによる危険と、過大評価をしてしまうために膨大な無駄が生じる可能性…… どれもよく考えなければなりません。
 あるインフォメーションがあって、それに評価・分析を加えていく際、基本は「結論を先に決めておかないこと」。先のイラクの例で言えば、「イラクには大量破壊兵器があるはずだ」という結論が先にあり、その証拠を見つけることが目的となってしまい、結論が無言の圧力となったり、証拠の正しさを確認することを怠ったりすることにつながってしまう。先入観を持たず、出てきた証拠を客観的に評価しなければなりません。
 大切なのは「得られた情報(それが外国の情報機関からもたらされたものであっても)を正確に分析し、評価するように努力するしかない。(改行)それには、常識と専門知識とを駆使すること」(pp.172-173)であり、得られた情報を「そのまま信用するのではなく、再度、独自に客観的立場から分析してみるなら、ポーランドのように「だまされた」などといわずにすむようになるだろう」(p.173)と述べておられます。

 これは投資でも同じことが言えます。「ある株が儲かる」あるいは、「ある投資手法はすごく利益が上がる」など、「情報」に踊らされていないでしょうか? そしてそれが幸運にも一度成功したり、あるいは失敗しなかった場合、それが絶対に正しいと頭から信じ込んでしまう危険。情報そのものも玉石混淆で、自分にあっていると自分で思ってしまったものだけを取り上げ、違うと思ったら頭から排除し、全く受け付けない。それが正しいものかもしれないという可能性についてはまず考えない。

 インターネットは情報の宝庫だと思います。またインテリジェンスもたくさんあると思います。しかしその区別は普通はつきません。自分と同様の考えの人については「インテリジェンス」と判断したくなりますが、それが本当にそうか、検証しなければなりません。データやインフォメーションは正しくとも、誤ったインテリジェンスがくっついているのかもしれない。しかしその検証は、相当に長い期間をかける必要があり、正しさ(あるいは誤り)が検証できるころには、一財産築いているか、さもなくば一文無しになっているかどちらかでしょう(笑)。頭から「正しい」「まちがっている」がインプットされているため、何の偏見もなく純粋に対象だけ見つめるのは不可能だと思います。江畑氏も、実際に英米の誤りを批判することは簡単だけど、いついかなるときも客観的かつ冷静に情報を収集したり、インテリジェンスを加えていくのは難しいだろうと述べておられます。イラクの例で行けば、世界中の誰もが、イラクには大量破壊兵器があると信じて疑わなかったわけですから。フランスやドイツもたぶん大量破壊兵器の存在を信じていただろうが、だからこそ証拠が出てくるまで武力行使は控えよといった点は正しい姿勢だったと思います。しかしその彼らにしてすら、もちろんいつも正しいとは限りません。

「得られた情報を常識と専門知識から判断する」というのは大切なことです。たとえば銀行や証券会社で実際にさまざまな金融商品を勧められます。購入する前に、それが自分に適した金融商品であるかどうかを評価しなければなりません。手数料が3%の投資信託がある。するとおおざっぱに言えば、投資信託購入時点で元本97万円からのスタートとなってしまいます。毎月分配してくれる投資信託があれば、配当に対して毎月税金を20%支払っているという事実。「お金がお金を生む複利の効果」を最大限に活かそうと思えば、こうしたことは私たちの不利に働きます。それが本当に私たちに適した金融商品なのか? 私もネタがないのでいつも同じような金融商品を同じように批判していますが(笑)。

 もちろん、人によりますよ。私にとっては良くない、私には適していないだけで、こういうものがかえって都合がいいというケースはあると思います。手数料をたくさん払うことによって、金融機関に文句が言える動機になるとか。それぐらいしか思いつきませんけど(笑)、ま、多様な意見があっていいでしょうから(笑)。
posted by zxcvaq at 06:31| Comment(2) | TrackBack(1) | ☆☆☆☆☆(必読!) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本当に投資にも当てはまることが書かれていますね。投資のプロを自認する証券会社の人が、結構投資の常識を知らない場合が多々ありました。ファンダメンタル分析も無しに、短期的な出来高だけのテクニカル分析(もどき)で株を推奨していたので、私がレシオの推移から却下しても的確な反論できない人が多かった覚えがあります。

長銀がつぶれる際も、国有化されるから大丈夫と言って株を薦めていた担当者がいましたが、私はどん底で買い、一時的な戻りで売り抜けた後は二度と手を出しませんでした。これらも常識的な判断をすれば、当然なのになあ〜と思わずにいられません。

すみません、長々と書き込ませて頂いて。私も金融理論を専門に勉強したことがあり、現在も投資をしているもので大変共感致しました。これからも拝見させていただきます。どうもお邪魔致しました。
Posted by alice-room at 2007年01月23日 22:01
alice-room様、
コメントありがとうございます。

私は金融理論について専門で勉強したことはありませんが、デイトレが流行するような風潮に疑問を感じ、ブログを始めました。まさに「モドキ」で儲かった・損しただけを問題にしていることが問題だと感じたのですが、実際は私が声を上げなくても、多くの人が私と同じようなことを、私よりもうまく表現しておられるのに出会い、投資そのものは二の次になってしまいました(笑)。日常のいろいろなことが投資につながっていることと、そうした題材を考えることで日常の生活そのものを質的に向上させることを目標にしたいと考えています。

 これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by zxcvaq at 2007年01月29日 06:02
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Excerpt: 湾岸戦争時、NHKで軍事評論家として頻繁に出演して一躍知名度が上がった江畑氏の本です。江畑氏はあの有名なイギリスの軍事専門誌「ジェーン」の日本通信員。書かれたのは2004年で少々古いのですが、それ..
Weblog: 叡智の禁書図書館
Tracked: 2007-01-16 20:17
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